「後味が悪い邦画10選」でご紹介した「さがす」について、あらすじをラストまで追いながら、伏線と結末の意味を掘り下げます。
なぜ父は失踪したのか。そして、ラストで娘が言った「うちの勝ちや」とは何を意味していたのか。
※この記事は、結末までのネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。
(予告編:Asmik Ace公式サイト)
「さがす」作品情報
| 公開年 | 2022年 |
| 上映時間 | 114分 |
| 監督 | 片山慎三 |
| 脚本 | 片山慎三、小寺和久、高田亮 |
| 出演者 | 佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智、石井正太朗、松岡依都美、成嶋瞳子、品川徹 |
| 映倫区分 | R15+ |
「さがす」あらすじ(ネタバレなし)
シングルファーザーの原田智は、娘の楓に「電車で連続殺人犯を見た」とつぶやいた翌日、姿を消す。
父を探す楓は、日雇い現場で「原田智」の名で働く別人の若い男と鉢合わせる。
その顔は、指名手配ポスターの連続殺人犯・山内と酷似していた。
父と殺人犯の間に何があったのか。「さがす」うちに楓が見つけてしまうものとは。
「さがす」あらすじ(結末までのネタバレ)
父の失踪
オープニング。
リストの「愛の夢」の曲が流れる中、庭で金槌を振り回している原田智(佐藤二朗)。
妻が自殺し、シングルファーザーになった智としっかり者の娘の楓(伊東蒼)は、貧しいが仲良く暮らしていた。
ある日、スーパーで「所持金に20円足りないから」という理由で万引きをして捕まった智のところへ、娘の楓が駆けつけ、不足分の20円を店員に差し出して許しを乞う。
智はその帰り道、楓に「電車で連続殺人犯の山内照巳(清水尋也)を見かけた」とつぶやく。
「あいつを捕まえれば、懸賞金300万も貰えるんやで。そんな金があったらなあ」と夢のようなことをいう智に、楓は「そんなの当てにしないで働き」と相手にしない。
翌日、楓が目を覚ますと、智が失踪していた。
「原田智」を名乗る別人
楓が同級生の花山豊(石井正太朗)とともに調べていると、その日、智が日雇い労働の現場に出勤していることが判明し、現場に向かう。
しかし、「お父ちゃん」と楓が呼び掛けたその人物は、智とは似ても似つかない、背が高く、痩せていて、黒い眼鏡を掛けた若い男だった。
楓は父の捜索願を警察に提出しビラ配りをするが、父から「さがさないでください」とのメールを受け取る。
掲示板に貼ったビラを剥がしていた楓は、指名手配犯のポスターを見てハッとする。
連続殺人犯の山内照巳という男と、先ほど父と同じ名前で工事現場で働いていた男の顔が酷似しており、懸賞金300万円と書いてあることで、父が電車で見た男ではないか、と気がつく。
そして、山内がこれまでに犯した犯行と、父との関係について探り始める。
その後、家賃を払えず父が手放すことにした卓球教室を訪れた楓は、物入れで寝ていた山内と鉢合わせし、慌てて逃げ出す山内を追いかける。
そして、塀をよじ登って逃げようとする山内のズボンを楓がつかむと、山内はズボンを脱いで逃げた。
楓は山内のズボンのポケットから、智のスマホと神戸港〜果林島の往復乗船券が入っているのを発見し、果林島に行くことを決める。
果林島に着くと、島のある一軒家で警察沙汰の事件が起きていた。
楓は、家の中で血を流して横たわる智を見て取り乱す。
「その人、私のお父ちゃん!お父ちゃん!」と叫んで駆け寄ろうとする楓を警官が制止する。
山内照巳という男
この3ヶ月前、ある浜辺で山内と”ムクドリ”を名乗る女性(森田望智)が会話していた。
彼女は、山内に自殺幇助を依頼していた。
ところが、山内のアパートに警官がやってきて、”ムクドリ”は助けられ、山内の連続殺人が発覚する。
山内は、死体愛好者(ネクロフィリア)だった。
山内のアパートの部屋には、幾つもの遺体がクーラーボックスに入れられていた。
父と山内の出会い
その頃、智の妻の公子(成嶋瞳子)はALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていて、笑顔を見せることがなくなっていた。
懸命に介護する智だったが、病状が進行するにつれて、公子は「死んだ方がましや、殺して」というようになった。
SNSで日々苦しさを募らせていく公子のつぶやきを見ていて、思わず手にかけようとするも、どうしても智には公子を手にかけることなどできなかった。
そんな時、公子のリハビリで訪れた病院で、智は山内と出会う。
思い悩んでいる智に「僕が解放してあげますよ」と山内は公子の殺人を請け負う。
そして、なんの躊躇いもなく公子を殺した山内は「有料コンテンツです」と言って智に20万円を要求し、運転免許証を取り上げる。
その後、東京へ戻るという山内は、智に一緒に死にたい人を救おう、と持ちかける。
初めは拒んでいた智だったが、山内に払った金を戻してもらい、協力することにする。
智がSNSで被害者を募り、山内が手を下すというやり方で次々に2人は手を汚していった。
果林島で起きたこと
しかし、”ムクドリ”の件で事件が発覚したことで追い詰められた智は、山内を罠にかけることにする。
智は、楓に「連続殺人犯の山内を見た」との目撃証言を残し、”ムクドリ”を連れて、山内が待つ果林島へ行く。
山内が指定した家は、以前山内が手に掛けた老人の家だった。
外で見張るふりをしていた智は、”ムクドリ”を殺して油断していた山内に「誰か来る」と言ってナイフを渡し、彼の後ろから金槌で襲いかかった。
そして、山内の所持品から自分の免許証を取り返し、山内の指紋がついたナイフで自分を刺し、警察を呼んだ。
すると、死んだと思っていた”ムクドリ”が智に「殺して」と言いながら迫ってくると、その顔が公子の顔と重なり、思わず首を絞めてしまう。
”ムクドリ”を殺したのは山内で、自分は正当防衛だと主張する智。
警察は、山内の口座から6万円余りが引き出されていたことで、智を怪しむが、金額が少ないことから智を解放する。
「やっと見つけた」
連続殺人犯を捕まえることに貢献したことで警察から表彰され、懸賞金も受け取った智は、卓球場を再開するが、自殺幇助に使用していたアカウントにメッセージが入っていることに気がつく。
待ち合わせ場所の通天閣で待っている智。その姿を物陰から見ていたのは、楓だった…。
夜、智と卓球をする楓は「忘れたらあかんで。私のこともお母ちゃんのことも全部」と言う。
怪訝な顔をする智だったが、外からパトカーのサイレンの音が近づいてきて、楓は「迎えに来たで」と智に言う。
「さっきの待ち合わせはお前か?」と聞く智に「お父ちゃんが何したんかわかってる」と泣きながら訴える楓。
「やっと見つけた」とつぶやき「うちの勝ちや」と言う楓に「何の勝負やねん」と言い返す智だった。
「さがす」考察
「うちの勝ちや」の意味
楓が最後に言う「うちの勝ちや」は、父を追い詰めたことへの勝利宣言ではないと思います。
この作品で、父娘は繰り返し卓球をしています。ラリーが続いている限り、二人は向き合っていられる。
その勝負の続きとして「うちの勝ちや」と言うことで、楓は父を犯罪者としてではなく、あくまで「お父ちゃん」として送り出そうとしたのではないでしょうか。
直前の「忘れたらあかんで。私のこともお母ちゃんのことも全部」というセリフも、罰したい相手に向ける言葉ではありません。
智が返した「何の勝負やねん」は、その意図を受け取れていないようにも、あえて受け取らなかったようにも見えます。
タイトル「さがす」の反転
この物語は、楓が父を「さがす」ところから始まります。
しかし物語が進むにつれ、探していたのは居場所ではなく、父が何をしたのかという真実へと変わっていきます。
そして最後の「やっと見つけた」は、無事に父と再会できた喜びの言葉ではなく、知りたくなかったものまで見つけてしまった言葉です。
「さがす」で始まり「見つけた」で終わる構造なのに、そこにあるのは救いではない。ここが本作のいちばん苦い部分だと思います。
智はどこで踏み外したのか
智は、妻を自分の手で殺すことができませんでした。それは弱さであると同時に、最後の一線でもありました。
しかし山内に代行させたことで、智はその線を自分で消してしまいます。
「死にたい人を救う」という建前で協力するようになった後も、智は自分を加害者だとは思っていなかったはずです。
ところが果林島で、迫ってくる”ムクドリ”の顔に妻の顔が重なった瞬間、智は初めて自分の手で人を殺します。
あれほど拒み続けた行為を、結局は自分の手でやってしまった。この皮肉が本作の中心にあると思います。
佐藤二朗さんが演じているからこそ、どこにでもいる情けないおじさんが、地続きのままそこへ行き着いてしまう怖さが際立っていました。
「さがす」の配信情報
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